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new item韓国の食堂車

韓国食堂車の歴史
韓国には日本統治時代の国際列車から続く食堂車の歴史があります。
1983年まで食堂車の営業は鉄道庁(日本統治時代は朝鮮総督府鉄道局)の直営で、
メニューにはサムゲタン(蔘鶏湯)もあったとか。しかし、直営は鉄道経営の圧迫に
繋がったのでしょう。
合理化で特級ホテルの中から入札で委託業者を決めることとなり、結果1983年6月に
ソウルプラザホテル外食事業部が選出され、1社独占体制で営業することになりました。
1980年代のセマウル号報道でよく「本日の食堂車営業担当はソウルプラザホテル」
などという記述が見られましたが、かつての日本の新幹線食堂車のように食堂車営業企業が
何社もあるという状況ではありませんでした。

洋食中心のメニューだった1980年代
ソウルプラザホテル外食事業部は食堂車営業の研修を帝国ホテル列車食堂で行っていた関係で、
1980年代のメニューは洋食一本やり。代表的なメニューはビーフアラモードとハンバーグステーキです。
その他、セマウルランチボックスという別称もあった弁当や呑兵衛御用達の乾き物おつまみもありました。

ビーフアラモード
汁っけのないビーフシチューにパスタ、カクテキ、フルーツカクテルがセットされたもので、1980年代の終わりごろのソウルプラザホテル列車食堂では定番のメニューだった。

ハンバーグ定食
1980年代のメニューからソウルプラザホテル列車食堂が撤退する頃までほぼ一貫してメニューに掲載されていた。ハンバーグのソースはデミグラスソースで、付け合わせにミニコロッケが付く。またスープはやや粉っぽいクリームスープだった。

ステーキ定食
ハンバーグ定食同様に粉っぽいクリームスープとサラダが付く。ソースはドミグラスソース。最初はフライパンでヒレ肉を焼く方式だったが、1990年代半ばごろから省力化のため材料を電子レンジでチンするスタイルとなり、味が落ちた。

セマウルランチボックス
いわゆる幕の内弁当でみそ汁も付く。なお、左上のつぼ型カップはコーヒーカップ。中身は五分目ぐらいしか入っていない。
何故かというと、これ、揺れ対策!普通のコーヒーカップになみなみと注ぐとコーヒーがこぼれるということで、分量を五分目にし、更にカップにくびれをつけてこぼれにくいよう創意工夫した労作!

おつまみ乾き物
ナッツと先いかがいっぱい入っている。ビールを頼む人がよく一緒にオーダーしていた。


1990年代にプルゴギ定食が開発されるまでソウルプラザホテル列車食堂の看板メニューでした。 なんか汁っ気の少ないビーフシチューみたいな料理という印象でしたが、写真を改めてしげしげ眺めているうち、 食べた当時のことをかなり思い出しました。

@肉はすね肉やスジ肉のような繊維質の強いものではなく、牛小間でもなく、ランプかモモかシンタマ辺りの赤身肉を 5mm厚にスライスしたものを使用。

Aソースは酸味がないので赤ワインソースではなくデミグラス系。

B玉ねぎとマッシュルームのスライスが入っていた。

C横にスパゲッティーが添えられていて、スパゲッティーをソースにからめて食べるようになっていた。

D香の物はカクテキ、デザートは缶詰のフルーツカクテルを使用し、スープはハンバーグ定食と共通の粉っぽい クリームスープだった。
…というわけでかなりハヤシライスに近い感じのものでした。 洋食一辺倒のメニュー設定は韓国国内の方々から「韓国の列車食堂なのに何故韓国料理が全くないのだ?」との 批判の声があったようです。しかし、直営時代のサムゲタン(蔘鶏湯)を復活させるとなると汁気の多い料理を 出さなくてはならない。しかし、当時食堂車の揺れがひどいことが問題となっていたため、運ぶときにこぼす ことが懸念されていました。研究の末、ソウルプラザホテルは牛肉と野菜を炒めるだけで済むプルゴギ定食を 1990年ごろにメニューに加えました。

プルコギ定食
1990年頃に登場した新メニュー。それまで食堂車のメニューが洋食一辺倒であったため、韓国料理のメニューを出そうということで開発された。当時の食堂車は古い車両が多く、よく揺れたため、スープ料理ではこぼれてしまうということで、プルコギが選ばれたという経緯を持つ。味は、コストコの「プルコギ」とわりと似ていた。


今見ると韓洋折衷で純韓国風の雰囲気ではないのですが、これでも食堂車に韓国料理がやって来たと評判になり、 これ以降次々と韓国料理メニューが導入され、1990年代後半には汁物もトレイに乗せてトレイごと出すという方法で メニューに加えていきました。ちょうどこの時期は揺れの少ないステンレスタイプの車両が食堂車の中心となり、 揺れが初代セマウル客車ほど問題になっていなかったことも汁物登場の背景にあったかもしれません。

カルビクッパ
列車の乗り心地が改良され、以前のように汁物を避けなくてもよいとの判断から登場。右側に牛カルビ肉のスープ、左にライス。食べる時は左のライスを右のスープに入れておじや状にして食べる。

カルビチム
牛カルビ肉を栗やシイタケなどの野菜と共に煮込んだ料理。電子レンジでチンしやすいメニューで、1997年にプルコギ定食と入れ替わる形で登場した。

コリコムタン
牛のしっぽを煮汁が真っ白になるまで煮込んで作る韓国式オックステールスープで、カルビクッパ同様、ご飯を汁の中に入れて食べる。

カレーライス
味はボンカレー風。埼玉県さいたま市の鉄道博物館には旧日本食堂の食堂車カレーを再現したレトルトがあるが、好みは分かれるところかもしれない。


90年代は韓国料理がメニューに導入された時期でもありましたが、洋食メニューが電子レンジで
チンのスタイルに変貌していく時期でもありました。季節や食材供給状況でメニュー内容を頻繁に変え、
セマウル号は定食5種、ムグンファ号は定食3種とメニューに差をつけていたのもこの時期でした。

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